059『クロコダイル』/(タンブラーから)おさらば

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今からちょうど8年前の
2008年11月8日。
クロコダイルで冨士夫のライヴを行った。

今だからこそ、そっと打ち明けるが、
このライヴの2日前に冨士夫は倒れ、
深夜の病院で集中治療を受けていた。

点滴を受ける冨士夫の姿を眺めながら、
宿直の医者に持病の説明をして、
ほとんど入院を覚悟した。

ただ、もうライヴの直前だったので、
公演のキャンセル告知は当日でも
同じだろうと判断したのである。

その病院内の景色は、
今も脳裏に焼き付いている。
医者にも随分と厳しいことを
言われたような気がするが、
ずっとぎりぎりの状況が続いていたので、
多少麻痺していたかも知れない。

その頃、倒れるまでの
冨士夫の体調は比較的良好だった。
夏から森の中で生活していたこともあって、
ストレスも少なく、温泉につかり、
焚き火をして過ごす毎日だったからだ。

病気をしてからは、
子供の頃からの親友でもある
ダイナマイツの吉田くんが
頻繁に通って来てくれるようになった。
ついには一緒にギターまで
弾けるくらいまでに回復し、
なんならもう一度、
一緒にステージに上がんねぇか!?
なんてことになっていたのだ。

それなら、クロコしかないだろう。
森の中の家はクロコのオーナーだった
ガンさん奥さんからの好意でお借りしていた。
冨士夫が養生できるようにと
店長の西さんが取り持ってくれたのだった。
そして、病気を支えてくれた世間のみんなにも
お礼をせねばならない。

「そんなら、クロコでやるべ」
冨士夫と吉田くんから阿佐ヶ谷弁が出る。

森の中でのリハが始まった。
リハといっても、
それこそリハビリに近い内容だったが、
焚き火を囲んで、
冨士夫と吉田くんが音を合わせる。
介護をしてくれていたナオミちゃんが
そのままドラムに座ってくれた。
本番では、Beggarsのハマちゃんが
ギターを弾いてくれる。
ステージ・アクトは、
そのBeggarsがやってくれることになった。

ディランのJust Like A Womanを冨士夫が歌う。
対して、吉田くんはSummertime Bluesを演るという。
二人でトンネル天国も演っちまおうって、
大笑いしていたのだが、
あんまり調子にノルと疲れちまうから、
たいがいにして休もうか……。

といった矢先だったのである。

冨士夫が倒れたのは…。

絶望感よりも、仕方がないという気持ちだった。
身体がいうことをきいてくれなかったのだ。
とにかくキャンセルするしかないな……と。

…………………………………………

「冨士夫、やるって!」
それは、エミリからの電話だった。

にわかには信じられなかった。
昨日の今日である。
少し前に病院を後にした時は、
意識のない状態で点滴をしていたのに…。

急いで、冨士夫の家に行った。
やはり寝たままではあったが、
冨士夫は病院から戻ってきていた。
気力だけはあったが身体が動かない。
しかし、キャンセルだけはしたくないと言うのだ。
それなら、とにかくクロコに顔だけでも出そうと。
せめて、闘病状態を応援してくれているみんなに対して、
感謝をするカタチだけは示そうということになったのだ。

だから、演奏ができるかどうかは二の次だった。

そんなこんなで
ステージ当日を迎えたのであるが、
ところが、である。

何だか妙に冨士夫の体調が良いではないか…。

“ 神様、これは奇跡なのでしょうか? ”

二日前の夜半に病院に救急搬送された人物とは、
とてもじゃないが思えない。
クロコでのリハーサルで
演奏もできるということが判明した。
多少、ヨレってはいるが、
コチラからすれば、十分に奇跡だったのである。

さて、ここで少し、当日のステージを
思い出してみようと思う。

この日の主役は、当然、病あがり中の冨士夫。
そして、何といっても、
この日のお客さんたちであった。
開場になった店内には途切れることなく
入場するお客さんたちの列が続く。
あわててオモテに出てみると、
とぐろを巻くように人列がつながっていた。

「このままじゃ入りきれないな」

機転をきかせた、店長の西さんが
店内の全ての椅子とテーブルを排除し、
店内をまったくのホール状態にした。

それでも、まだ列は続いていた。
100人も入れば満席になる店内が、
その3倍を越える客で一杯になったのだ。

身動きがとれない。
しかし、まだ入ろうとしている列は続いている。

「これ以上は無理だ」

そう言う西さんの言葉で、
門を閉ざす役目をおおせつかった。

「申し訳ありません、ここで閉め切らせていただきます」

(おいっ!トシ! なんだよ、コノヤロ!)

みたいな声が遠くからしたような気がする。
本当に申し訳なく、
誠心誠意こうべをたれたつもりだったのだが、
閉められた側にいた知り合いからは、

“ 笑いながら閉めてたんだよ、トシ、お前ワ! “

なんて、後になって随分と言われたのものだ。
(申し訳ない、そんな顔なんです)

結局、入りきれなかった客は100人以上。
多くが帰らないでいてくれた。
店内から聴こえてくる演奏を聴きながら、
想い想いに寒空で楽しんでくれていたのである。

つまりは、コチラが感謝を込めて組んだステージが、
待ち望んだオーディエンスのパワーによって、
思いがけず、冨士夫の復活祭となったというわけである。

ステージ・アクトのBeggarsの1曲目から
冨士夫は飛び出した。
これは完全にフライングである。
では、あるが、段取りなど、この日は無礼講。
ドッカ〜ン!っという、客のボルテージで、
会場はロケットスタートばりに変化した。

続くはいよいよ冨士夫のステージだ。
やっとのことで弾き語るソロを、
点滴よりも強いエナジーで、
お客さんたちが支えてくれる。

親友の吉田クンが、ダイナマイツ以来、
40年振りのコンビネーションを見せ、
それをBeggarsのハマちゃんと、
当時はトラッシュにいた
ナオミちゃんが支えてくれた。

そして、驚くことに青ちゃんの登場。
これは、まさにサプライズであった。
村八分をつくる前から同じ空気を吸っていた、
まるで兄弟のような存在の登場で
ステージはエンディングに向かっていく。

最後の曲は『いいユメ見てね』。

♪たいしたことないさ。
くよくよすんなよ♪

そんな歌を、
つい48時間前に意識不明だった
輩に歌ってもらった日にゃあ、
涙がちょちょ切れる…、というものだ。

…………………………………………

この日のクロコダイルには、
そんなコチラ側からの想いがある。

あれから8年。
あの日、復活した冨士夫はもういない。

だけど……、
ふと、本人を呼びたくなった。

誕生日はみんなで8月10日に祝ったから、
これは、僕個人からのメッセージである。

11月3日。
ほとんど日にちも8年前に合わせた。

あの日と同じようにBeggarsを呼んで、
冨士夫と一緒にバンドをやっていた
オス(The Ding A Lings)にも来てもらう。
VESSEのジュンとジェイシーは、
8年前にスタッフをやってくれているし、
一度、冨士夫に見せたかったバンドなのだ。

そして、何よりも、冨士夫のかつての仲間。
僕らが知らないところで
すでに始まっていた物語を作っていた
村八分のメンバーたち、
恒田さんと、よっチャンをお招きする。

「トシ 、なに勝手な事やってんだよ!」

そんな、冨士夫の声が
聞こえてくるような気がする。

斜にかまえ、ふんぞり返って、
「オラぁ、行かねえよ」
って、カブリを振っているのだ。

でも、そのうち壁にもたれたギターに手を伸ばす。

そして、ゆっくりとした、
なが〜いチューニングのあと、
忘れたころに歌い出すのだ。

それは、あの日のユメの続き、
8年前のステージのエンディングのように
永遠に僕らの中で流れている。

…まるで“生きている”歌声のように。

(2008〜2016年11月)

ご報告/
「山口冨士夫 と よもヤバ話」
http://toshiakikasuya.tumblr.com/
は、タンブラーから
『Nico-Nico Guitars BLOG』
https://www.niconico-guitars.com/html/blog/
に、引っ越しました。

今回は引っ越しの最中なのですが、
次回からは新居にて、(Nico-Nico Guitars BLOG)
たたずんでいるつもりです。

何の事はない、
「コッチに来れば」
と言う知人の家に上がり込んだところ。

さて、御馳走でもしてくれるのでしょうか?
楽しみでしかたありません。

このワクワク感を、
これからも皆さんと共有していければ、と思います。

まずは、ごあいさつと、お知らせまで。
これからもよろしくお願いいたします。

【粕谷利昭 と、(冨士夫)】

あっ、11月3日、お待ちしてます。

※下記にある映像は、クロコのために音合わせをする冨士夫と吉田くんです。
ガラケーで撮ったので、なんてことないのですが、
今では貴重になってしまいました。

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