Larry Dimarzio ~リプレイスメント・ピックアップを生み出した男~ 15
前回はこちら。
https://www.niconico-guitars.com/html/blog/staffblog/larry-dimarzio-14/
Ace Frehley(エース・フレーリー)やEarl Slick(アール・スリック)がSuper Distortionを使用していたこともあり、ギターリストたちの間で徐々に存在が知られ始めました。
ある日、ピックアップの噂を嗅ぎつけたAl Di Meol(アル・ディ・メオラ)からラリーに連絡がきます。
そして、アル・ディ・メオラ本人がスタテンアイランドのラリーのショップを直接訪れました。
ラリー愛用のレスポールを見せると、すぐさまその場でそのギターを買いたいと言いましたが、それはさすがに出来ないということで、別のギターを用意する手はずを整えることにしました。
70年代初期のレスポールデラックスを手に入れる手配をし、フィニッシュとネックのリシェイプ以外は全てラリーのものと同じように再構築したものにモディファイすることに。
ピックアップはリアに”Super Distortion”とフロントにDual Sound(3芯タイプ)で、フレットも含めた全てのセッティングをいつものようにしっかりと仕上げました。
そのギターは無事”Return to Forever”のライブのサウンドチェック前に届けらます。
アル・ディ・メオラはよほど気に入ったのかその日のライブ全曲にそのギターを使用したそうです。
また別のある日、ジーン・シモンズから”KISS”の
“ギター・テックとしてツアーに帯同してみないか?”
という誘いを受けます。
しかしギターショップも業績が良くなり始めていたので、その誘いは辞退することに。
代わりにTom Morrongielloを代わりとして推薦します。
(ブルックリン・テクニカル・ハイスクール時代からの友人であり、のちにボブ・ディランのギターテックとなる凄腕)
また別の日、Roy Buchannan(ロイ・ブキャナン)から電話があり、
“手に入れたばかりのヴィンテージのエスクワイヤーためのフロント・ピックアップを製作して欲しい”
との依頼。
早速その日の夜すぐにロイ・ブキャナンに会うために彼の演奏するクラブを訪れたラリー。
そのトーンとプレイに驚愕します。
彼のトーンに合わせるための調整可能なポールピースを組み込んだ新しいストラト/テレサイズのピックアップを作成する決心をしました。
わずか数日の間に超特急でギターを完成させ、ロイ・ブキャナンに手渡したところ、彼も大満足のサウンドだったそうです。
このピックアップはのちの”SDS-1″のプロトタイプとなりました。
※SDS-1は現在でも生産されているストラトキャスター用のピックアップで、ヴィンテージのP-90のようなサウンドとして定評があります。
ちなみにGrateful Dead(グレイトフル・デッド)のJerry Garcia(ジェリー・ガルシア)は、Doug Irwinが製作した有名な”Wolf”(ウルフ)に2基のスーパー・ディストーションと”SDS-1″を組み合わせて使用しています。

さて、ロイ・ブキャナンのための”SDS-1″の製作が完了したラリー。
この頃、スーパー・ディストーションの需要が高まってきたタイミングで、チャーリーから多くの部品を購入するのも難しくなったため、ラリーはピックアップ製作のためのパーツを自身の手で作ることにしました。
そうして思いついたのが、
“ボビンをクリームカラーにできないか?”
というアイデアでした。
そうすれば、暗く煙が充満したクラブの中でも、少し離れた離れたところからでも、誰もが自分のピックアップを認識するようになるのではないか?とラリーは考えました。
早速、気に入った色味のクリームのプラスチックシートを見つけ、最初の”DiMarzio Cream Super Distortion”ピックアップの製造を始めました。
このクリームカラー(のちにラリーが大量生産するために改めて作った)は”DiMarzio”が商標登録し、現在も使用されています。
ラリーはクリームカラーをピックアップのアイデンティティとし、のちの製品はもちろんのこと、価格表やカタログにもクリームカラーを徹底して使いました。

ある日、リペアの仕事を受け持っていたAlex MusicのためにSuper Distortionではないピックアップもいくつか製作して持ち込みましたが、アレックスはそのピックアップの購入に難色を示しました。
ラリーとアレックスはこのことで仲たがいし、袂を別つことになり、ピックアップの販売は他店を頼ることになりました。
そこで48番街ではよく知られていたラリーは、すぐ近くのTerminal Musicへ。
そこであっさりと6基のSuper Distortionの注文をもらいます。

しかし販売にあたり、ピックアップのパッケージングは自分でやらなければならないとのことで、パッケージのデザインに取り組むことになります。
ラリーはこれまでに無い個性的なパッケージングにしようと考えます。
当時ギブソンではピックアップは単体で販売しておらず、ピックアップが欲しければあくまで修理用で、部品部門から注文してもらえたが、小売の商品としてのパッケージングされているようなものではありませんでした。
まず思いついたのが透明なプラスチックの箱を使うというアイデア。
これならパッケージングを通してダブルクリームのボビンが見える。
早速、プラスチックショップへ向かい、ぴったりのサイズの箱を見つけ、その隣のショップでピックアップを箱の中で固定するための発泡スチロールのようなものを購入。
その箱だけでもルックス的に問題ないとは思ったが、さらにラベルを作成することも必要であると考えました。
ラリーは以前大家のパットが円形の鏡の中心に中世風の金メッキの太陽の絵を描いているのを思い出しました。
その絵を見て、自身の風貌(赤毛のロングヘアーと髭)に似ているなと思ったそうです。
そこでパットを訪ね、ピックアップ販売用のプラスチックボックスに入るような”Super Distortion Humbucker”、”DiMarzio”、そして赤い中世風の太陽が描かれた梱包カードを作ってくれないかと頼みました。

こうしてパットの手書きしたカードが入れられた最初の6つのピックアップのパッケージが完成。(この箱は現在も同じものが使用されているそうです)
すぐにTerminal Musicに届けました。
1週間以内にTerminal Musicから電話があり、さらに12台のSuper Distortionを追加注文が入ります。
~続く~