燦然と輝く愛しき名脇役たちについて ~後編~

こんにちは。スタッフの鹿毛です。
前回は1990年代、前々回は創成期のものを取り上げたのに引き続いて、愛しきオフセットモデルたち、今回は近年のものについて取り上げていきたいと思います。
挑戦、実験の嵐だった時代を通り過ぎて、やがて既成の概念と概念をミキサーに掛けてスムージーにしたような楽器が飛び出しはじめました。


Fender USA 2001 Cyclone (Sunburst)

まずは”Cyclone”です。生産時期を鑑みて前回の記事で取り上げてもよかったのですが、改めて今回取り上げます。
1997年にFender Mexicoより登場し、Fender JapanやFender USA、工場を移してからのSquierなどで多岐にわたる仕様で2006年まで生産されていました。
スペックとしては”合の子”の象徴のようで、Mustangのオフセットボディを持ちながらストラトタイプのシンクロ・トレモロを搭載するために厚みのあるボディを採用。スケールはFenderでは珍しいギブソンミディアム(24 3/4)スケール。ピックアップにはフロントに”Tex-Mex Single Coil”、リアにはお馴染み”Atomic Humbucking Pickup”を搭載。ピックアップ構成的には前回取り上げた”Jag-Stang”を想起させますが、こちらもカートの使用していたMustangに着想を得たのでは、と囁かれていますね。


Cycloneはヘッドに描かれているこのキャラクターが可愛いですよね。Tシャツにプリントして着たいです。
個人的には”Cyclone II”をずっとずっと探し求めています。カラーは問いません、是非当店にてお取引ください…!


Fender Mexico 2018 Sixty-Six (Daphne Blue)

次はついこの間登場した”Sixty-Six”です。
Fender Mexico Alternate Realityシリーズより2018年に登場したこのギターの名前の由来は、「1960」年に登場した”Jazz Bass”の形状のボディに「6」本の弦を張りギターにした、というところから来ているそうです。
先述の通りボディ形状はサイズダウンしたJazz Bassのものを採用しており、メタルのコントロールプレートもJazz Bassリスペクト。シンクロ・トレモロを搭載し、(Fender流に言うなら)HSSレイアウトのピックアップにはフロントとセンターに”Player Series Alnico 5 Tele Single-Coil”。リアに”Player Series Alnico 2 Humbucking”を搭載し5Wayセレクターで切り替えます。ボディ形状はJazz Bass、コントロールはストラト、ピックアップにはまさかのテレキャス!これぞまさに合の子スムージー状態…。
(ESP系にて販売されていた、LUNA SEAのINORAN氏モデルの「NEO CUSTOM」にコンセプトが非常に似ていると思ったのは僕だけでしょうか…?)
僕も以前所有していたのですが、抱えた時のバランスは非常に良かったです。弾き心地は”Cyclone”にかなり近いイメージで、ストラトのオールマイティさをベースにしながらも、というような印象を受けていました。個人的には”アド・リア”や”アド・フロント”でリア/フロントミックスの謂わゆる「テレキャス状態」にできるスイッチを追加しようかずっと悩んでいました…。


Fender Japan 2017 Mahogany Offset Telecaster (Natural)

最後に取り上げる楽器は”Offset Telecaster”、通称”Telemaster”です。おそらく色々な人のもとにこのような楽器のアイデアはあったのでは、と思いますが、このモデルが登場した頃からコンポーネントのTelemasterを巷で見かけることが増えたような気がします…。
2017年にFender/ギター・マガジン/バンド「RADWIMPS」のフロントマン野田洋次郎氏の三者によるコラボ企画によって生まれた”Telemaster Ace”をベースにしたモデルで、Telemasterモデル自体は”Offset Telecaster”と銘打たれFender JapanやSquierなどで生産されています。
見ての通り、Jazzmasterのボディ形状にTelecasterのサーキットを導入したルックスもコントロールも非常にシンプルな楽器です。個人的にはシンプルさが最大の特徴のTelecasterに、1つのエッセンスとしてのJazzmasterの形状、という2つの要素のバランス感覚がジャストなのでは、と思います。
(この”逆”をやった”Parallel Universe The Jazz-Tele”はもうバランス崩壊でキテレツだったじゃないですか…。僕は「最高!最強!」と思って飛びついて買いましたが。)

少し脱線してしまいました。”Offset Telecaster”のサーキットは先述の通り基本的にはTelecasterのものなのですが、このモデルにはフロントに”P-90″が搭載されています。Fenderでは近年になるまであまり見られなかった仕様なのですが、木部全体に使用されたマホガニーも含め、野田洋次郎氏の音楽性を鑑みてこのようにデザインされたのでは、と思います。昨今の主に若い世代への人気が高まっているP-90需要へ応える形で、Fenderは”Mustang 90″や”Powercaster”などのモデルを発表していますが、これらのモデルにはFenderからの「過去のモデルをリイシューするだけでなく、コンポーネント的なアプローチで柔軟に楽器を制作することができるんだぞ」というメッセージが込められているような気がしてしまいます。
ちなみに何故、わかりやすく且つ周知されている”Telemaster”という名称を用いずに”Offset Telecaster”というある意味回りくどいモデル名を付けて販売しているのでしょうか。それは、Fender本社のある米国ではおもちゃ会社に、主な市場である欧州では自動車部品メーカーに、そして日本では建築機械メーカーにそれぞれ既に商標を登録されてしまっているからなのです。
(日本で登録されている商標は”Tele-Master”と間にハイフンの入るものだったので、日本限定でなら”Telemaster Ace”と名前をつけて販売することができたそうです…。)

私物を取り上げたりしながらも長々と書き連ねていたこのシリーズも前編、中編ときて今回が最後になります。
今回取り上げた「オフセット奇妙系(?)」は僕の最も愛するジャンルの楽器たちなので、本当はもっともっと取り上げていたい…!とか思ってしまいます。
もし機会があれば、Fender以外の楽器たちについてもお話できたなら個人的には最高ですね…!

それでは。

Fender Japan 2017 Mahogany Offset Telecaster (Natural)

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