Fender Yngwie Malmsteen Stratocasterのシェイプについて

こんにちは。
今回はタイトルにもあります通り、Fender Yngwie Malmsteen Stratocasterのボディシェイプについて取り上げていきたいと思います。

普段は特段注目して見ることがない楽器でも、撮影を通して見ると様々気付きがあってとても面白いです。それが先日入荷しましたFender USA製の「Yngwie Malmsteen Stratocaster(2011/2017年製の2本)」の撮影中に起こりました。

Yngwie Malmsteen Stratocasterと言えば、取り上げるべきはかなり深くスキャロップ加工された指板面でしょうか。またはブラス製のナットか、彼の求めるニュアンスのために開発されたピックアップ「Seymour Duncan / YJM FURY」について取り上げるのもいいと思います。
しかしながら、僕が取り上げたいのは何よりもボディのシェイプなのです。感動したので…。

以前僕は、このブログ内で「1970年代のストラトキャスターのボディシェイプ」について取り上げたことがあります。そのカスタムショップやAmerican Vintageなどをはじめとした、現行の50sや60sなどが基本形のリイシューモデルには見られない独特のシェイプが非常に気になりました。その際には写真を撮って比べてみたりしたのですが、それ以降当店に入荷するFender社系の70sのリイシューモデルには、その70sのシェイプの特徴が見られませんでした。
スペック的にはちゃんと70sのストラトキャスターを使用するプレイヤーの楽器の仕様などがかなり踏襲されていて、やはり見るからに70sのモデルなのですが、それでも僕個人としては、少しだけ物足りなさを感じていました。

しかし、Yngwie Malmsteen Stratocasterは違いました。


Fender USA 2017 Yngwie Malmsteen Stratocaster (Vintage White)


Fender 1974 Stratocaster (Natural/M)


Fender USA 2012 New American Vintage 1956 Stratocaster (White Blonde)


Fender Custom Shop 2004 1960 Stratocaster Relic (Olympic White)

これらの写真でもジャック周辺に目を向けて見るとわかるのですが、70sのストラトキャスターとYngwie Malmsteen Stratocasterはボディが若干角張っていて、50sや60sなどのスタンダードなリイシューモデルの丸みを帯びて抱え込みやすいシェイプとは異なっているように見えます。個人的には、このシェイプを見るだけで70sのFenderの楽器によくみられる重量のある角張った個体を抱えた時の感覚が想起されます。

また、先述の「70sのストラトキャスターのボディシェイプ」について取り上げた記事では主にコンターに言及していたので今回も取り上げたいと思います。


Fender 1974 Stratocaster (White/Maple) – エルボーコンター、ボディエンド側から


Fender USA 2017 Yngwie Malmsteen Stratocaster (Vintage White)


Fender 1974 Stratocaster (White/Maple) – バックコンター


Fender USA 2017 Yngwie Malmsteen Stratocaster (Vintage White)

僕はここに一番感銘を受けたのですが、トップもバックもコンターの形状にオリジナルとの共通点を持って製作されているように見えます。
構図が若干異なるため写真では伝わりにくいのですが、トップの方はエルボーコンターの入り始めの位置が緩やかなカーブではなくはっきりと角度がつけられて始まっているところや、傾斜が浅く厚み的には削られていないところが挙げられ、
バックの方は深さがあり、サイドエッジからコンターの入り始めまでの距離が長めに取られていて、カッタウェイ側の入り始めに距離が取られており、全体で見ると角度が急、といったところが挙げられると思います。

シグネチャーモデルと言えば、まずはカラーリングやデザイン、次にピックアップやコントロールをはじめとしたアッセンブリや、ペグやナットやトレモロなどのユニット、さらにはネックシェイプやフレットや指板Rなど、特徴的なスペックの部分は網羅されていることが殆どです。しかし、細かなボディのシェイプについては、トラディショナルスタイルのものを基本形に製作される場合が殆どなので、現行で成形されたものと同形のものを用いているように感じます。
しかしながら、Yngwie Malmsteen Stratocasterは本人の使用する70sのストラトキャスターを元に製作されているので、特徴的なスペックを搭載した上に、ボディシェイプも70sスタイルに準拠しているのです。ここが僕が個人的に推したい部分なのですが、本来50sや60sに比べて評価が低く不人気な70sの特徴的なボディシェイプを、ちゃんと楽器の「スペック」としてシグネチャーモデルに採用した、という点こそが僕がこの楽器に注目したいところなのです。

シグネチャーモデルですから、本人が使用する楽器を再現するのは至極当然のことかもしれません。しかしながらFender Custom Shop/USA/Mexico/Japan、Squierに至るまで、スペックの間隙を縫うような70sスタイルの楽器が多く見られる中、シグネチャーモデルは細かなシェイプの部分まで逃さず要素を拾うというところに、名前を冠するからにはという拘りが感じられて、個人的に喜ばしく思いました。
今後もこういった視点で楽器を見て、より多くのことを学んでいけたら、と思いました。

それでは。

Fender Custom Shop 2008 Masterbuilt Yngwie Malmsteen Tribute Stratocaster by Jason Smith (White)

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