Fred Stuart ~カスタムショップのナンバーワン ”テレキャスタービルダー”~

Fender Custom Shopにおける最高機種を作り続けている”Masterbuilt”シリーズ。一人一人のビルダーについて少しだけ深掘りしてみます。

カスタムショップ在籍時、テレキャスターを作らせたら右に出るものはいないと言われたビルダー。

1947年 オレゴン州、スウィングミュージックが好きな父とオペラ&クラシック好きな母の間に生まれる。
父はラジオエンジニアで、KFLS1650という地元のラジオ局の立ち上げた人物の一人だそうで、彼の名前のイニシャルをそれに合わせて名付けられたそう。(Fred Lloyd Stuart)

ベトナム戦争に行った経験があり、その頃にギターを始める。

その後、20代の頃に楽器店で見積もったフレット修理の代金に驚き自分でリペアをすることに。

そこで、リバーサイドにあった小さな楽器店”Barth Guitars”で働きながら勉強でもしようと考えます。

何気なく選んだお店だったようですが、そこはリッケンバッカーで初めてピックアップ付きのエレキギターを開発したボール・バースの経営するショップでした。

そこで経験を積んだフレッドは。その後地元の楽器店で、リペアマンとして1年ほど働き、その後1987年にフェンダーに入社することになります。

ちょうどその頃はカスタムショップが設立されるタイミングということもあり、フレッドはプロダクションラインで働きながらも、ジョン・ペイジからの頼みで、すでにセットアップと”テスター”として手伝っていたそうです。

そして1987年末~1988年初頭頃に正式にカスタムショップ4人目のメンバーとして迎えられます。
(マイケル・スティーブン、ジョン・ペイジ・リチャード・シャルトに次いで)

在籍当初は、在籍以前同様に最終組み込みとセットアップを頼まれることが多かったそう。(特にジョン・ペイジから)

”最後の組み込みをして初めて分かる問題点を修正していくのが非常に難しく、一番面倒だから任されていた”と本人は言っていたそうです。

ギター製作に関して熱意を感じさせるエピソードの多い人物です。

バリトンスタイルのBajo Telecasterの企画を提案した時、当初はその企画は却下されたようですが、フレッド自身はそのプロジェクトを中止せずに、自分の休暇を当ててまで、そのデザインと製作に時間を費やしました。
それ熱意を見た仲間たちはBajo Telecasterをカスタムショップのプロダクションに戻そうとしたという話が残っています。

フレッドは初期カスタムショップメンバーの中でも、独創的かつ想像力に溢れたビルダーだったとジョン・ペイジ。

”Santacaster”
四角い形のテレキャスターで、ボディにはクリスマスプレゼントのようにリボンとキラキラの飾り付けをしたギター。

”Cowcaster”
黒のカスタムテレキャスターにアクリルピックガードを作って、牛皮をその下に付けたギター。

など、どちらも自身の自由時間を使って作ったそうで、NAMMショーにはこういう誰も見たことないようなギターを持っていこうとジョンにアピールしていたそうです。

どこからその独創性を得たのか?と尋ねられた彼は、
“GretschのBo Diddleyだ。Bo Diddley is a gunslingerというアルバムのカバーに写っているギターをみて、ギターはL-5、レスポール、テレキャスターみたいな形に縛られなくていいんだと思ったんだ”
と言っています。

そして4年後には4人目のマスタービルダーとして認定されます。

その頃にはヴィンテージスタイルだけでなく、アートギターも手掛けており、Egyptian / Mayan / Aztec エジプト/マヤ/アズテックのテレキャスター等、非常に芸術性の高いギターを製作し続けています。

マネージャーのジョン・ペイジはフレッドにこう言っていたそうです。
“自分たちがどんなものを作れるかを見せることが大切で、それがどんな”変わった/ダサい”ものでも意味がある。
だからとりあえず作ってみてくれ、ただ他の仕事に遅れは出さないように頼む”

それに対して、フレッドは了解といいながらも
“でも必ず遅れちゃうけどな、そりゃあ好きなもの作ったら時間かかるでしょ”
と言ったと笑いながらインタビューで答えています。

やはりこの頃のカスタムショップはかなり自由度の高さが伺えますね。

その後、2001年に退社。

同マスタービルダーであったアラン・ハメル(Alan Hamel)と共同した A&F Custom Guitar Service を設立しました。

現在はStuart Fine Custom Guitar という自身のショップで、ピックアップの製作とデザインを主に手掛けています。

近年では、2017年にカスタムショップの30周年を記念したプロジェクトである”THE 2017 FOUNDERS DESIGN PROJECT”にも参加しており、ヘリンボーンテレキャスターというギターをデザインしました。

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