Larry Dimarzio ~リプレイスメント・ピックアップを生み出した男~ 16

前回はこちら。
https://www.niconico-guitars.com/html/blog/staffblog/larry-dimarzio-15/

Rick Derringer(リック・デリンジャー)がLoBueのギターを持ってGuitar Player magazineの表紙を飾っていたのを見たラリー。

⚠︎リック・デリンジャー=”The McCoys”のボーカル/ギター。デビューシングルの”Hang On Sloopy”は1965年のナンバーワンヒットとなる。
ヒット曲”Rock and Roll, Hoochie Koo”の作曲、Johnny & Edgar Winterのプロデュース、Steely DanやCyndi Lauperのアルバムにスタジオミュージシャンとして参加するなど、多岐に渡り活躍。

リックの電話番号を知っているであろうLoBueに勤めていたSteve Blucher (スティーブ・ブラチャー)に取り次いでもらい、リックが使用しているLoBueのギターに載っているピックアップは自身が製作したことを伝えました。

リックはピックアップを非常に気に入っており、自身の所有する他のギターたちにもガンガン載せてみたいという嬉しい提案をラリーにしました。

早速、ラリーはリックの住居へ招かれ、Super Distortionを載せてもらうためのオリジナル・チェリーサンバーストの1959年製レスポールを手渡されました。

その時オリジナルのPAFをどうするか尋ねたところ、
“ラリーにあげるよ”
と言われましたが、いつか戻したくなったときのためにキープしておいた方がいいよと説得して、ケースの中にしまっておきました。(結局元のPAFに戻すことは無かったそうです)

その後、リックはオリジナルのExplorerもピックアップの載せ替えをすることになります。

それから今でもラリーとリックは懇意な間柄で、今でも彼は自身のシグネチャーギターにはDiMarzioピックアップを使用しています。

話は変わり、ラリーは後のDimazio社にとって重要な人物に出会うことになります。

それはスティーブ・ブルーチャーの紹介で会うことになったSteve Kaufman(スティーブ・カウフマン)。

彼と彼のパートナーのHarry Kolbe(ハリー・コルビ)は、S. Hawk Ltd.というブランドを立ち上げて、ディストーション/ブースター/イコライザー/プリアンプなどの機能を有した3種のエフェクターを製作&販売していました。(フットスイッチの無いタイプ)

⚠︎ハリー・コルビー=のちの80~90年代からアンプのモディファイを手がけていたことでも知られているニューヨークのテック。

これらエフェクターの販売に苦労していたスティーブ・カウフマンはアメリカ全土を回り、エフェクターの使い方の講習会(デモンストレーション)をすることにしました。

このエフェクターはSuper Distortionを搭載したギターで弾くと、音が格段に良くなったようで、店頭デモ用のギターにはリアにSuper Distortion、フロントにDual Sound(ミニスイッチで直列/並列)を取り付けました。

1~2か月後、スティーブ・カウフマンはニューヨークに戻ってきました。

“どこに行っても、エフェクターは買いたいとは言われなかったけど、ピックアップは買いたいと言われたよ”

そうして、業績不振だったS. Hawk Ltd.は1974年に設立されたものの、同年に倒産。

ラリーはそのスティーブ・カウフマンを誘い、Dimazio初のセールスマンとして迎え入れることにしました。

実は、彼は人々の名前を顔を記憶するフォトグラフィックメモリーを持っており、その上全米の数々の有名音楽店ともたくさん交流を持っていました。

彼の手腕もあって、ディマジオの業績をみるみると伸ばしました。

こうして資金も入ったことで、さらにピックアップたちをさらに改良して次の段階へ進むことに。

ラリーは、ピックアップの修理を数多く手がけてきた経験から、フェンダーピックアップの破損の原因は、コイルフォームの上下に使用されているバルカンファイバーのボビンであると特定しました。

このボビンが物理的に歪むことで、コイルが損傷していました。

そこでフェンダーピックアップの約3倍の強度と安定性を備えることで、歪みも発生しない素材”Lamitex”(ラミテックス)を使用。

構造的な欠陥を理由に返品されることを絶対に避けたいという思いから、拘って選択したそうです。

そしてマグネットの長さを変更し、独自のコイルレシピも追加しました。

Fat Strat(後に”FS-1″と改名)とPre BS Tele(後に”Pre B-1″と改名)と呼ばれるフェンダーやギブソンが提供していたものから、構造とサウンドの両方を一新する改良版のテレキャスターとストラトキャスターピックアップの設計が完成。

Super DistortionやDual Soundsなど完成していたものにもさらなる改良を加えて、いよいよ量産体制を整えての販売開始の時が来ました。

これをきっかけにB.C. Richのニール・モーザーやHamerのポール・ヘイマーといったギタービルダーから電話がかかってくるようになりました。

二人とも私のピックアップの評判を聞き、自分たちのギターにもぜひ使いたいとのことでした。

初年度の生産分はすべて赤っぽい色合いのラミテックスで製作。

Van Halen(ヴァン・ヘイレン)のかの有名なフランケンにもそのピックアップが載せられています。

その後に黒のラミテックスシートを見つけ、翌年には切り替えます。

ちなみに同時期にGibson EBOのピックアップにも着手しています。

ギブソンEBOは、ラリー曰く
“今まで聴いたベースピックアップの中で最悪の音”
だったようで、元のピックアップに欠けていた弦の音色と高音域を追加し、さらにシリーズ/パラレル切り替えのスイッチも追加。

このピックアップは70年代初頭にジーン・シモンズが使用していたスペクターベースにも見られます。

~続く~

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