Todd Krause ~アーティスト・ビルダー3~

前回はこちら
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1998年、それまでのカスタムショップの総監督であったJohn Page(ジョン・ペイジ)がカスタムショップから離れ、代わりに
Mike Eldred(マイク・エルドレッド)が就任しました。

その頃からカスタムショップの意向や運営方法が大きく変化していきます。

それまでのジョン・ペイジによる運営は、
“ビルダーたちはとにかく自由に良いギターを作る、金のことはそんなに気にするな”
というタイプのものでした。

そのため初期のカスタムショップでは、”アートギター”と言われる豪華絢爛な装飾や奇抜なデザインの超高額のギターが多く製作されました。

カスタムショップは、あくまで”Fender”という名前を宣伝するための広告塔であり、大きな収益を上げるために製作しているわけではないという認識も根強かったようです。

マイク・エルドレッドはこの方針を大きく変えて、カスタムショップで利益を生み出すために様々な改革を行います。

その一つとして、2000年頃にはそれまでの”Arttist Builder”という各アーティストに専門のビルダーを担当させるというやり方がなくなっていきます。

その頃には才能に溢れた素晴らしいマスタービルダーたちがカスタムショップに数多く所属しており、担当しているビルダーが忙しい時などは、その時に手が空いている他のビルダーが代わりに製作をすることになりました。
(もちろんアーティストからの強い希望と時間がかかることに同意があれば任意のビルダーが指定可能でした)

この頃からはトッドが窓口になり、それぞれ”合う”であろうビルダーに振り分けたりもしたそうです。

そんな中、トッドはさらに昇格し、シニアーマスタービルダーになります。

シニアーマスタービルダーとなると、弟子(Apprentice)と一つのチーム(Team Built)がつくことになり、大きな責任を伴い、役割は非常に多岐に渡っていくことになりました。

-製作のデッドラインを守ること (カスタムショップにおいてこれはかなり重要なことのようです)
-自身の思い描く理想のギターの製作すること
-ディーラーや顧客との直接のやりとりをすること
-新たなアイディアの着想に取り組むこと (ピックアップやコントロール等々)
-自身の持つスペシャリティ(得意分野)を完成させること
-弟子たちの師となり教育をすること
-様々な問題のトラブルシューターとなること
-各プロジェクト(トリビュートモデルなど)のプロダクト・マネージャーとなること

そんなシニアーマスタービルダーとなったトッドにとっての大きなプロジェクトがありました。

それはトリビュートシリーズとして世界限定275本生産された”Tribute Series Eric Clapton Blackie Stratocaster”。

エリック・クラプトンが1973年から1985年まで愛用し続けたストラトキャスター通称”Blackie”を細部に渡り完全復刻したモデルの製作。

2004年当時のクリスティーズオークションで$959,500という史上最高の落札額を記録した事でも一躍脚光を浴びたブラッキー。

それまでクラプトンのためにギター製作をしていたトッドをリーダーとして、カスタムショップ全体で”Blackie”のトリビュートモデルの製作に取り掛かります。

2005年10月24日、ブラッキーを競り落としたギターセンターから”Blackie”はカスタムショップに到着。

まずはカスタムショップに到着した実機の撮影や採寸、そしてトッドとマイク・エルドレッドがその楽器のみ持つ特性について沢山のメモを取ります。

その後、当時所属していた9人の精鋭マスタービルダー達が同様に実機を観察して、様々なメモを取り、特性や特徴を共有しています。

ちなみにギターセンターからフェンダーカスタムショップに到着した日に、エリック・クラプトンのテックであるLee Dickson (リー・ディクソン)もギターの細かい部分について解説してもらうために招致していました。

数年間ブラッキーを見ていなかったリー氏はまるで古い友人に会うような気持ちだったようで、ブラッキーを見て涙ぐむほどに感極まったそうです。

このギターの製作に関してのトッドのインタビューが残っています。

~インタビューに続く~

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