[ニコニコ雑記] Fender製品コントロールのバリエーション その5 ~Telecasterのコントロール変遷~

こんにちは、店長の野呂です。

今回も前回までに引き続き、Fenderギターのコントロールについて。

テレキャスターという楽器は50~60年代の中でノブの役割が変化した唯一の代表的なフェンダーギターですので、その辺りを紹介いたします。

まずは”ブロードキャスター”としてモデルが誕生した1950年~1952年途中頃までのコントロールから見てまいりましょう。
(ここでは、ボディエンド側からネック側にかけてポジション1~3と記します。)

ポジション1:リアPU&フロントPUのパラレルミックス (トーンなし)

ポジション2:フロントPU (トーンなし)

ポジション3:フロントPUのプリセットハイカット (トーン調整不可)

まず一つ特徴的なのが、トーンコントロールが存在しないということです。
コントロールは”マスターボリューム”と”ブレンド”となっています。
“ブレンド”はポジション1でのみ有効で、フロントPUのボリュームとして作用します。
つまり、リアPU単体の音が欲しいときにはこのノブを絞りきって使用することを想定しています。
ブレンドノブをMAXにすることで、いわゆるMIXポジションのサウンドを出力することも可能となっています。

Fender Custom Shop 2002 MBS ’51 Custom Telecaster Relic Master Built by Todd Krause (Blonde)

Nocasterのような通常のカタログスペックのリイシューモデルにおいてこの配線が採用されていることは稀ですが、上記のようなマスタービルトなどの特殊なモデルでは採用されていた例があります。

写真からも3wayスイッチにプリセットハイカット用のコンデンサーおよび抵抗が結線され、通常トーンコントロールとなる位置にはトーン調整用のコンデンサーが搭載されていないことがわかります。

続いて1952年の途中から1967年頃まで採用されるのが、”ヴィンテージ配線”と一般的に言われることの多い以下の配線です。
かつてのフェンダーUSAのアメリカンヴィンテージシリーズ’52 テレキャスターモデルや00年代のカスタムショップのリイシューモデルにも多く採用されていたので、馴染みのある方が多い配線でしょう。

それでは、コントロールを見てみましょう。

ポジション1:リアPU&フロントPUのパラレルミックス (トーン操作可能)

ポジション2:フロントPU (トーン操作可能)

ポジション3:フロントPUのプリセットハイカット (トーン調整不可)

ノブの役割も、”マスターボリューム”と”マスタートーン”に変更されています。
このコントロールで多くの方を困らせるのが、”MIX”ポジションがなくなってしまっている点です。
(裏技的には、ポジション1&2の中間でレバーを止めることでMIXポジションの音を出すことが一応は可能です。)

写真は2007年製のAmerican Vintage ’52 Telecaster

細かな点に言及すると、3wayスイッチとボリュームポットの間に位置するプリセットハイカット用のコンデンサーの数値がそれまでの0.05μFから数値の大きい0.1μFのものへ変更されています。
これにより、よりハイカットされた音色方向へシフトしたことが伺えます。

ところで、「かなりモッコモコでほとんど使い道がない」ような気がするフロントPUのプリセットハイカットですが、なぜ搭載されていたのでしょうか。
一説には、ベースの代用をする場合に使用することを想定したと言われていますが、果たしてあのようなサウンドで本当にベースの代わりが務まったのかは謎が残りますね。

そして皆様にお馴染みの、通称”カレント配線”が1967年以降になると採用されます。

ポジション1:リアPU (トーン操作可能)

ポジション2:リアPU&フロントPUのパラレルミックス (トーン操作可能)

ポジション3: フロントPU (トーン操作可能)

ノブの役割は、”マスターボリューム”と”マスタートーン”です。
実際に現存する多くの’67以前のテレキャスターの配線もこのように変更されている場合が多くあり、あらゆる人にとってもっとも実用的なコントロールと言えそうです。
(近年では、フェンダーカスタムショップのリイシューモデルやUSAレギュラーラインのモデルのほとんど全てで最初からカレント配線が採用されています。)

ちなみに’69年以降にボリュームポットのカーブが250kΩから1,000kΩ(=1MΩ)に変更されるほか、0.001μF のハイパスコンデンサーが搭載されるようになります。
ストラトのトーン用コンデンサーの容量が小さくなったのもこの頃であることから、当時フェンダー社がよりブライトなサウンドを指向していたことがわかります。

今回はこの辺で。

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