George と Leoの終着点、G&Lについて ~中編/テレキャスター編~

こんにちは。
今回は前回に引き続き G&L について取り上げていきたいと思います。
前回の最後に「「ASAT」「Doheny」あたりを」と言っていたのですが、正直テレキャスターもとい「ASAT」を甘く見てました。
新たな開発の際にもこだわりやエピソードがとっても多く、取り上げていると分量が中々なことになってしまったので、今回は「ASAT」を張り切って取り上げていきたいと思います。


G&L USA ASAT Special (Sunburst)

「ASAT」はテレキャスターを基にして設計されていることは言うまでもなく一目瞭然なのですが、前回取り上げたストラトキャスターを基にした「S-500」や「Legacy」、そしてMusic Man時代からの歩みも併せてもう少し考えてみると、個人的にはさらに思うことがあるのです。


Musicman 1978 Sabre II (Sunburst)

レオは、Music Man在籍時にはテレキャスターやストラトキャスターを始めとした、自身が過去に設計したものを掛け合わせてブラッシュアップするような設計のギターが多くみられたように感じます。サーキットやコントロールは当時流行していた「スーパー・ストラト」などストラトキャスタータイプのものを基軸に据えて、シェイプなどのルックスはジャズマスターやムスタングなどのオフセットモデルを基にしてデザインされているように感じます(と言っても左右のくびれは対称になっているので、オフセットになる前のムスタングやデュオソニックに、ジャズマスター系のシェイプをエンド側に据えたような印象でしょうか)。個人的にはオフセットのシェイプをレオが引き続いて使用していたことに嬉しさを覚えますが、今回はG&Lを取り上げる記事なので…。Music Manの話はこのくらいにしておきます。

レオはその後G&Lを始めてからも「Skyhawk」「Cavalier」などのモダンな”掛け合わせ”系モデルを制作していました。
しかし1985年、ついにレオ本人によってテレキャスターを基にしブラッシュアップされたギターが発表されます。その名も「Broadcaster」です! …正気かレオ・フェンダー。なぜわざわざその名前なんでしょう、どうしても使いたかったんですかね…。またもやこの時も当然ながらGretschから反発を受け名称の変更を余儀無くされています。
当店での取扱が過去になかったので写真は取り上げられないのですが、仕様としては現行ラインナップの「ASAT Special」に近いです。個人的には「オリジナルのBroadcaster持ってます」って言いたいので是非欲しい楽器ですね。


G&L Tribute Series ASAT Classic TRC-AC (Natural/R)

そして新たに付けられた名称が現在も使用されている「ASAT」です。ちなみにASATとは、衛星攻撃兵器を意味する「Anti-Satellite」の略称から取られています。結構物騒ですね。
そんなASATですが、現行のラインナップでは
・トラディショナルなスタイルの「Classic」
・モダン寄りに設計された2Hレイアウト テレキャスター・デラックススタイルの「Deluxe」
・トラディショナルなスタイルに寄りつつも別設計のピックアップやブリッジ・ユニットを搭載した「Special」
の3種類が基軸に据えられています。
Classicシリーズの中にはフロントにハムバッカーを搭載した「Bluesboy」、それをさらにセミホロウ構造にしてFホールを開けた「Bluesboy Semi-Hollow」があったり、Deluxeシリーズの中にはトップにカーブが施された「Carved Top」やTune-O-Maticを搭載してピックガードの付いた「Deluxe II」などなど、細分化されたニーズに応えるべく様々な仕様のモデルがラインナップされています。


G&L USA ASAT Special (Sunburst)

その中でも僕が取り上げたいのはこの「ASAT Special」です。なんといっても、どこかで見たことがありながらも独特な形状のピックアップが僕にはたまりません。ジャズマスター?P-90?どれとも似ていながらどれとも異なるこのピックアップの名前は「Jumbo Single-coil MFD」です。そのままですね。実際にそういったニュアンスを狙って設計されているようで、メーカーも「それらのピックアップに似ているがよりパンチの効いたボトムエンドと倍音で輝くブライトなトップエンド」と明記しています。個人的にはブーミー寄りにパワー感のあるところはモズライトのピックアップに似ているようにも感じました。
そして”新たに設計された”もう1つのパーツがブリッジ・ユニットです。Music Manのストップテイル・ユニットと形状が限りなく似ていますが、僕はこれはもうレオの歴史の「オールスター」みたいだな、と思って非常にワクワクします。


Fender Custom Shop 1998 Will Ray Mojo Hellecasters Telecaster (Lime Green)

そしてこれはあくまで憶測の域を出ませんが、恐らくこのギターをG&Lの設計で新たにデザインし直したものが「ASAT Special」の原型となっているのでは… と僕は思います。Will Rayの所属する「The Hellecasters」はフロントマンのギタリスト3人が三者三様のG&L製ギターを使用していた時期があり、Will Ray自身はG&Lが新たに設計した「MFD Z-Coil」を3基搭載したシグネチャーモデルのASATを使用していますが、別のメンバーJohn JorgensonはSilver FlakeのASAT Specialをシグネチャーモデルとして使用しています。そしてもう1人のメンバーJerry Donahueは各所から独自の5Wayセレクターを搭載したテレキャスターを様々なメーカーからシグネチャーモデルとして発表して使用しています。とは言え彼らはテレキャスターの過剰とも言える愛好家たちだったそうですが…。

このASATを深堀りしたことによって、レオがどれだけテレキャスターという楽器そのものをより良いものにして行きたい、と考えていたのかの一端を知ることが出来たような気がします。
ASAT Special、ずっと前から欲しい楽器なのでぜひ手に入れたいです…!
そして、次回こそは「Doheny」や「Espada」など新設計の楽器たちを取り上げたいです。

それでは。


G&L USA ASAT Special (Sunburst)

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