[ニコニコ雑記] 在庫のギターから独断でおすすめを選ぶなら#3 Fender ST

こんにちは、店長の野呂です。

それでは、前回&前々回の続きです。
「在庫のギターから独断でおすすめを選ぶなら」と題して、私が自分用の楽器を選択するとしたら、どんなポイントを重視して選ぶのかを今回も紹介させていただきます。

前回・前々回に私が選んだギターがこちら!

Fender Custom Shop 2002 1960 Stratocaster Relic (Candy Apple Red) です!

前回は”指板R”による違いに関して取り上げました。
今回は“フレットサイズ”による違いに関して着目してまいりましょう。
個人的には、弾きやすさやサウンドにかなり大きく関わる部分だと考えています!

まずは、フレットの”高さ”によって何が変わるのか。
高いフレットと低いフレットのメリット・デメリットを考えてみましょう。

[写真右]の高めのフレット、おおよそ1.4mm程度の高さがあるものが”ハイ”や”トール”などと言われ、一般的に高めのフレットとされています。

高めのフレットでは、プリングやハンマリングといった左手のフィンガリングによる音を軽い力で出しやすいというメリットがあります。
また、チョーキングも軽い力で演奏しやすく、低めの弦高でも指板面と弦のクリアランスが確保されているため、チョーキング時に隣の弦が指の下に潜ってしまうということが起きにくいです。

デメリットとしては、スライドにおいて引っかかりを感じやすいという点があります。
(ただし、これはフレットエッジの仕上げも大いに関連する部分となっています。)
また、あまりにも高さのあるフレットだと左手の押弦に力が入ってしまった際に音程がシャープしてしまい、音痴な演奏になってしまうというデメリットがあります。
軽いタッチでフィンガリングされる方では問題になりませんが、私はつい力んでしまったときにこのデメリットを感じることがあります。

逆に[写真左]の低めのフレットでは、スライドやグリッサンドはスムーズに行いやすく、指板エッジでのフレットの引っかかりは気になりにくいです。
その分、ある程度の弦高がないとチョーキングやビブラートを行いにくい仕様といえます。
低めのフレットの他のデメリットとして、どうしてもフレットは消耗品であることを考えると、フレット打ち替えまでの寿命が相対的に短いことも挙げられます。

ちなみに、「どのくらいの期間でフレットのすり合わせや打ち替えが必要になるのか」といったご質問を時々頂きますが、これはプレイスタイルやセッティング、演奏頻度によって大きく変わることや、どのくらいのフレットの低さまで演奏性の上で許容できるのかが人によって異なるので、一様にご回答差し上げるのが非常に難しいです。
実際に軽いタッチで指板上の全ポジション満遍なく使われる方は頻繁に使用していてもまったく問題がない場合もありますし、いつも同じキーや同じポジションで演奏されるような方はピンポイントでフレットが減ってしまってすぐに調整が必要になる場合がございます。

いずれにせよ、フレットをなるべく減らさないための心掛けとして、フレットのナット側すぐ横ギリギリの綺麗に音が出る位置をやさしく押さえること、錆びた古い弦で演奏しないことを意識しましょう。

次にフレットの”幅”によって何が変わるのかも考えてみましょう。

[写真右]のような幅が太いフレット(2.8mm程度)では、弦とフレットと接する部分の面積が大きくなり、これによって音が太く感じられるケースが多いです。
音量も安定しやすいので、コンプ感があるといった印象もあるでしょう。
コードを弾いた際には特に密度感があり、まとまったサウンドに感じやすいです。
また、スライド時のひっかかりを感じにくいのも幅のあるフレットです。

逆に[写真左]のような幅が狭いフレット(2.0mm程度)では、弦とフレットと接する部分の面積が小さくなり、音の立ち上がりがよく明瞭なアタックが得られると感じます。
アタックの強弱によるダイナミクスもつけやすい印象です。
サウンドもやや明るくなるようなイメージですが、音が細く感じられる場合もあります。
コードを弾いた際には各弦の粒立ちがよく、オープンで広がりのあるサウンドに感じます。

どのような点にメリット・デメリットを感じるかは人それぞれといえそうですね。

今回選んだ楽器に搭載されているのはヴィンテージタイプのトラディショナルな規格のフレットです。
高さが1.0mm程度と低め、幅が2.0mmと狭めになっています。

個人的には、ヴィンテージフレットに”フェンダーらしいサウンド”を感じるのでその点は好きなのですが、いざ弾くとなると程々に高さや幅があるものの方が弾きやすいと感じるジレンマがあります。
その楽器をどのように使いたいのか、用途によって使い分けができるといいかもしれません。

総括として、フレットが小さいものの方がウッディーなサウンド、大きいものの方が金属的なサウンド傾向があるように感じますので、高さ・幅それぞれのバランスも重要となります。

そして、ベントサドルをブロックサドルに変えたときや、フェンダーベースでブリッジをバダスタイプに変えたときの変化と同じように、弦の接点部分での質量が大きくなるとサステインは向上する傾向があります。
大きいフレットほどサステインで有利、小さいフレットほどアタックのダイナミクスで有利という傾向もあるかもしれません。

ちなみにフェンダーカスタムショップ製品では、製造年ごとに以下のような傾向があります。

・2000年代半ばまではヴィンテージタイプ(背が低く、幅が狭い)のフレットが多い。
・2000年代後半から2010年代半ばにかけて、ヴィンテージタイプの割合が減り、ミディアムジャンボタイプ(背はそこそこで幅が広い)の割合が増加。
・ここ数年はナロートールタイプ(背が高く幅が狭い)が主流に。

あくまで傾向ではございますが、お目当てのスペックを探す際の参考にしてみてください。

次回はさらに他の要素をトピックにして、楽器選びの際に注目しているポイントをご紹介します。

今回はこの辺で。

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